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園芸用自動水やり器

[開発の趣旨と経緯]

 植物を身近に植え育てると、無農薬の野菜を収穫できたり副菜に彩を添えるハーブが手軽に得られたりする実益があります。それ以上に、四季折々の風情を肌で感じることができ、花が咲き実がなることを味わうことは豊かな気持ちになり心が癒されます。 このような園芸を助ける道具にはいろいろなものが市販されており、便利なものがあふれています。合同会社物理工学研究社では、1~2週間程度家を空ける際に庭やプランターの水やりを無人で行う器具を開発しています。
 この器具の特徴は、日光が散水管にあたっている時だけ、水栓が開いて散水されるというものであり、電気は使わず、機械的に単純な構造のため、安価に作ることができ、壊れにくく、維持経費も不要のものです。 平成28年の夏に試験的に使用し、その際の問題点を改良して、平成29年春、新しい構造のものを完成し節水型自動散水管と名付けました。平成28年秋には上記自動開閉水栓の特許を申請していますが(特願2016-161315)、 平成29年春、この節水型自動散水管について実用新案特許を申請しました(実願2017-002516)。

 

[用具の説明]

 以下に登場する用具の説明を図1を用いて説明しておきます。図1の(a)は平成28年に開発した自動開閉水栓です。同図の(b)は、プランターなどに適合する散水棒です。 T字型のものやI字型のものがあります。同図の(c)は、平成29年春に開発した節水型自動散水管です。

図1 (a)

図1 (a)

2016年夏に試験した自動開閉水栓。

図1 (b)

図1 (b)

プランターに置かれたT字型の散水管。I字型もあります。

図1 (c)

図1 (c)

試作開発品の節水型自動散水管。

[問題点と解決策]

 平成28年夏の試験で得られた問題点は、陽が当たっている時間が長い場合、当たっている間中、水栓が開きっぱなしであり、水やりをプランターなどに限るとプランターが水浸しになってもさらに水が供給され続けるという問題がありました。 日陰になる部分がある庭であれば、その場所に自動開閉水栓を置いて、陽の当たる時間が一時的になるようにでき、1日のうちトータルで散布される水量を調節することも可能です。庭が広いような場合、図1(a)の自動開閉水栓を複数設置して 一つの水栓から枝分かれして複数の散水棒に導くことが必要になります。以上の対応が取れない場合、陽が当たっている間に散水される水量を減らすには水圧を下げるか何らかの方法で水栓が閉じられるようにすればよいです。 水圧を下げることができれば、節水ができるだけでなく、ホース外れといった不慮の事故を未然に防ぐことができるメリットが生まれ、また、散水のために張り巡らすホースとして薄肉のビニール管などが利用できるようになります。 何らかの方法で水栓が閉じられるようにする方法は図1の(c)で示した節水型自動散水管で実現されているので、後述します。

 

[試験した散水設備]

 図2に示すポリ容器は250ℓの水を貯えることができます。台の地面からの高さは90cmです。このポリ容器には水道水を直接入れるようにしており、空っぽでない限り地震などの災害時に備える水としても利用できます。 現時点で、このポリ容器を水源とする自動散水管は4本(図3(a), (b)など)、自動開閉水栓が1個(図4)で、日中の気温が30℃近くに上がった5月の晴天の日に1日で25ℓ程度自動で散水しました。

図2

250ℓの水を貯えることができるポリ容器。

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(a) 節水型自動散水管(その一)

図3

(b)自動散水管(その二)

図4

自動開閉水栓による散水棒を使ったもの。

[節水型自動散水管の説明]

 ここでは実用新案特許を申請した書類をもとに解説しますが、その前に動作原理を簡潔に記します。鉄道のレールの継ぎ目は冬には隙間ができているのに暑い夏の昼間には継ぎ目がぴっちりと合わさります。 日光はレールにも基礎の土台にも一様に降り注いでいて同じように温度が上昇しているにもかかわらず、土台よりもレールの方が線膨張率が大きいので伸び縮みの影響が現れます。 レールの線膨張率は100万分の10程度の大きさであり、10mの長さのレールが温度10℃上昇につき1ミリ伸びる計算になります。この伸びで止水栓を開くようにするには、線膨張率の大きい素材と小さい素材を組み合わせて、 また、日光の輻射を効率よく取り入れることができるようにする必要があります。また、普通の水道栓のような大きい口径の弁を開閉するには大きい力が必要となるため、弁のサイズは必要な限り小さくするのが良いです。 弁は線膨張率の小さい心棒を線膨張率の大きいパイプの中に入れ、伸びると心棒が弁を引き抜くような構造にします。以上のアイデアでできたのが以下詳述する自動散水管です。
 2016年に特許出願した際の自動開閉水栓は図5に示す通りです。すなわち、線膨張率の異なる素材を用い太陽光の輻射熱を利用して止水弁を自動的に開閉するというアイデアを実現する一つの実施例です。 園芸や農業の分野で散水器は広く利用され、プランター1個の場合には1本の散水管があればよいですが、1軒の家の庭園で使用する場合、広さに応じて多数の散水管が必要となります。 このため、散水管そのものの価格は安価でなければなりません。 ところが特願2016-161315で例示された自動開閉水栓をそのまま実施しようとすると、多数の部品、特に高精度の機械加工仕上げを必要とするOリングの数の多さのために、経済的に安価に製造することが難しいです。 このため、園芸や農業の分野で利用される自動散水器として、安価に実現できる構造を開発しました。

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図5 特願2016-161315における自動開閉水栓の実施図。符号の意味は以下の通りです。
1:給水口
2:排出口
3:弁本体
4:弁棒
5:ばね
6:Oリング
7:線膨張率の小さい金属心棒
8:線膨張率の大きいABS樹脂
9:ねじ受け
10:調節ねじ

図5に示す自動開閉水栓を簡便にし、かつ、製造コストを下げるように開発したものが、図6に示す自動散水管です。

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  • 図6 実用新案特許で申請した自動散水管。符号の意味は以下の通り。
    1:給水口を含む弁本体
    2:線膨張率の大きいABS樹脂
    3:調整おねじ
    4:線膨張率の小さい金属心棒
    5:弁棒
    6:ばね保持具
    7:調整めねじ
    8:圧縮コイルばね
    9:Oリング
    10:めねじの回転止めねじ
    11:散水孔

自動散水管の給水ホースは弁部本体1に接続されます。弁部本体1には線膨張率の大きい素材でできたプラスティック樹脂の外側パイプ2がねじ込まれ、その先端に調整ねじ7を介して線膨張率のより小さい金属の心棒4に連結した心棒支持金具3がねじ込まれています。 心棒支持金具3は回転止めのための小ねじ10により回転せずに軸方向にスライドできます。心棒4の先端にはOリング保持具5が固定されてOリング9がつけられ、Oリング保持具5と一体となった心棒4は、ばね保持具6により、弁部本体1の内部に保持された圧縮コイルばね8により、 弁座に押し付けられています。止水状態にするには調整ねじ7を左向きに回して緩めればよく、ばね8の力により心棒支持金具3、Oリング保持具5と一体となった心棒4がOリング9を弁座に押し付けます。この図6では止水状態を示しています。 弁部本体1とOリング保持具5との間には水流のための隙間があり、心棒4とばね保持具6との間にも水流のための隙間があります。はじめ弁が閉まっている状態から、太陽熱でパイプが膨張すると金属棒の膨張に勝って弁が開かれます。 弁座からOリングが離れれば給水口から入った水は、外側パイプ2に流れ込み散水孔11から散水されます。陽があたっていない場合に弁が閉まるようにするには、右端のめねじを緩め、ばねの力でOリングが弁座に押し付けられるようにします。
パイプ長を25cmとし、パイプにABS樹脂(線膨張率100ppm/°C)を使用し、心棒に真鍮棒(線膨張率20ppm/°C)を用いると、1°Cの温度上昇でパイプの伸びと真鍮棒の伸びの差は20μmとなります。ばねによる伸びを無視すると、 弁の変位は10°Cあたり0.2mmに達し、ここで使用するOリングの弁を開閉するには十分な大きさです。夏の朝の気温が25°Cである晴れの日中に、太陽が昇って黒色のパイプに陽があたるとパイプの温度は優に40°Cを超えます。 この場合、朝の弁の位置から0.3mm開くことになります。水流量は水圧にもよる上、パイプに開けられた散水孔の大きさにもよりますので、使用目的に適合するように水流量を調節することができます。 心棒4とばね保持具6との間には水流が確保できるほどの隙間があり、開いた弁からの水流は外側パイプに入り込み、パイプの要所要所に開けられた散水孔11から散水されます。この構造をとることにより、 図5で例示された自動開閉水栓(特願2016-161315)のOリング数5を1個だけに減らすことができます。
散水弁が開いてパイプ内に水流があるとパイプが冷やされ、太陽熱による伸びを減じる働きがあり、特に給水の水温が低い場合には弁が閉じられるようになります。この場合、散水は間欠的に繰り返されることとなり節水につながります。

図7は試作品をテストしている外観です。多種多様の散水器具が開発され利用されている現状で、本自動散水管が応用される場面は、陽があたり始めてから陽がかげるまで散水を行う必要がある場合です。 季節のはじめに一回だけ初期設定をしておけば、電力なしでかつ無人で散水を行ってくれ、雨や曇りでは散水は行わない自動散水器具です。その構造は簡単で堅牢であり、維持経費が不要です。 しかしながら、一般の方々が本自動散水器を手渡されて利用できるようになるには、初期設定の必要性や設定の頻度などについて、熱膨張を応用する本自動散水器の原理をしっかり理解しておく必要がります。

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図7 20リットルの水タンクにホースで接続した試作開発の自動散水管。水平に植木鉢やプランターに載せておけば、1週間程度散水を賄うことができます。

[試作開発品の販売]

 図1の(c)に示したものと合わせ、18本の製品を以下のnet shopで販売しています。使用するビニールホースの内径は7ミリです。なお、上水道に直接接続できる内径7~8ミリの強化ホースを接続できる方は、直接に上水を利用できます。 購入する方は、本自動散水器の動作原理を完璧に理解して下さい。

お問い合わせ

​弊社は新アイデアを商品化するための試作開発を主な業務とし、2018年秋以降麦工房土浦のパン工房を設立し、数少ないスタッフで運営しているため、営業時間中であっても直接の対応が難しいため、できるだけメールでのお問い合わせをお願いしています。

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